宅建試験では全50問中、14問が「権利関係」として出題されます。宅建業法に次ぐ出題率に加え、民法をはじめとした範囲の広さで対策に苦慮する受験生が多い分野です。
その中でも民法は法律初学者の方は独特の癖のある文体にとっつきにくさを感じることも。
難解な設問を紐解いたところで点数に結びつきにくいと思われがちな民法ですが、学習に占める暗記の割合が少なく、底力をつけていくことが求められるため、学習初期にゆっくり取り組むには向いています。丁寧な学習を心がけましょう!
宅建試験における民法学習の重要性について
民法を通して読解力をつける
民法は私人間の権利や義務関係について規定された法律です。日常生活の様々なルールの根底を定めたものです。日本は法治国家とはいえ、一つ一つの出来事すべてに対して個別具体的な法律があるわけではなく、その根幹となるものとして大きく構えられているのが民法です。どうりで抽象的、包括的な文体になっているわけですね。条文数も多く、過去問で問われたことがない論点も存在しています。
民法で定められていることを日常の出来事に照らし合わせ、紐解いていく。これをそのまま試験に応用していく。このようにぼんやりでも捉えておきながら民法を始めてみるとよいでしょう。文体は今まで見たことのないなじみが少ないものかもしれません。
話が少しそれてしまいますが、高校や大学の受験勉強で、直前期に現代文の学習をする人は少ないでしょう。暗記系を学習した方が得点に結びつきやすいからです。
でも現代文を解く力は、あらゆる科目の問題文を解釈する力につながります。難解そうな問題文を目にした時に、問題に立ち向かう大きな助けになります。
その点を潜在的に理解している人は、時間的に余裕のあるうちに学習し、じわりじわりと読解力を身に着けていくのです。
民法のような大きな法律の学習を通して読解力をつけていくことは、他の学習の底力になるばかりか、日常生活の様々なシーンにも役立ちます。私人間の権利や義務関係について規定された法律なので日常を論理的に紐解くことにつながります。
民法学習は慣れと方法論から
民法の学習は問題文から主述、関係性、先後を解釈する練習をします。繰り返しになりますが、読解力が大切です。そして、暗記メインではないとはいえやはり覚えなくてはいけないこともたくさんあります。
法解釈を学ぶことを念頭に置きながら、暗記事項も学習していく。民法学習は、学習する意義を念頭に置きながら進めることで、学習効率が高まります。
数学は公式を覚えておかないと解けない問題がたくさんあります。理屈で解くことができても非効率なことも。暗記は退屈、理解しようとする過程を楽しまないと暗記できない、ということでは暗記も捗りません。
暗記しなくてはいけないことはある程度の割り切りは必要、あとは暗記したことを応用していく。この積み重ねでどんどん得点できるようになります。
暗記事項をどのように法解釈していくのか、問題演習を通して方法論を学んでいく。読解力と暗記力を両輪として学習していきましょう。宅建試験の学習を通して民法を学習する機会を与えられたことは多いに意義のあることだと思います。
民法は他資格でも試験科目になっていることが多いので、資格試験において汎用性が高い法律といえるでしょう。
民法の基本書がおすすめ
宅建学習として民法を始める前に、民法とはどのような法律であるのか、噛み砕いて解説している基本書を読むことをおすすめします。初心者向けに理解しやすく書かれている本がいくつか出版されているので、書店でぱらぱらめくってみてこれなら理解できる、というのを読んでみるとよいでしょう。
理解には個人差があるので、もし買った本がわからなかったら、他の類似本を読んでみて、それでもわからなかったら、その時は宅建の民法問題を少し見てみましょう。理解できていないと思っていたのになぜか「問われていることを解釈しようとしている自分」に気が付くかもしれません。
私は以前民法を学習したことがあり、久々でしたので勘を取り戻したいと思い、「民法がわかった」を読みました。タイトルの通りわかりやすかったのでおすすめします。
「元法制局キャリアが教える 法律を読む技術・学ぶ技術」は民法に特化している本ではありませんが、法律を読み方の教本としてとても丁寧に解説しているのでおすすめです。また、法律をすでに学習したことがある方も基本に還る意味でよいでしょう。法律とはこのようなもの、と問題意識を持たずに割り切って分かったつもりになっていた部分について、基本を理解するよう発破をかけられるような本でした。
民法にとっつきにくさや苦手意識を持っている方も、読書をする心持ちで基本書を読むだけで民法のこなし方がなんとなく理解できるかもしれません。
民法は好きですか?
ところで民法をこれまでに学習したことがある方に自問自答していただきたいのは「民法は好きですか?」ということです。
この問いへの解答ですが、もしかするとそれほどの根拠がないままに「なんとなく難しい。とっつきにくい。」と思っていることが多いのではないでしょうか?実はバイアスかかっている方が多いのではないかと思います。なんとなくそんな感じに言われていることを耳にする機会が多いと、そのようにとらえてしまいがちです。
本当に好きではない場合ももちろんありますが(好き嫌いは人それぞれです。)、そうではなくなんとなく嫌いな感じがしている人は勿体ないです。それほど苦手に感じることはなくてむしろ好きであることを認めるとさらに実力が伸びていきますので、改めて自分は民法が好きなのかどうか考えてみましょう。
まとめ
宅建学習をはじめるにあたって、民法をどんな意識で学んでいったらいいのか考えることは試験対策としてとても大切なことです。
宅建試験は宅建業法を固めることによって得点に結びつきやすいし、法令上の制限や税その他についても知っていれば点数になる、だから学習しましょう、というのはもちろんその通りではあります。一方で一筋ではいかないのは権利関係、が凛としているからだというのは、近年の問題文の問われ方の複雑化を考えても目をそらさない方がいいのではないかと思います。
権利関係以外の科目でも読解力を求められる問題も増えているので、民法を学習する姿勢は宅建試験全範囲の学習で役立つことでしょう。民法が得意になってくると、暗記そのものは他の科目より少なくてむしろ楽に思えるかもしれません。苦手意識がある方もぜひ前向きに学習してみることをおすすめします。